制作者に聞いてみた -『シマナガサレ』-

「対戦(PvP)ゲームがあるなら協力(Coop)ゲームがあってもいいよね」

——『25th』もみんなでパーティをするという目的がありましたが、『シマナガサレ』のような「協力型」のゲームはこの界隈では珍しいと思います。これに取り組まれた理由や、ゲームに限らず影響を受けたものがあれば教えていただきたいです。

25氏:珍しいといえばそうかもしれないのですが、別に大きな理由はなくて対戦(PvP)ゲームがあるなら協力(Coop)ゲームがあってもいいよね、的な感じでしたね。

そもそも、鎬を削り合うより協力して物事を進めたほうが交流ってしやすいですし。

ただ、自分も「定期ゲって自動戦闘じゃなくてもいいんだ!」と強く衝撃を受けたのは『トバトバ』なので、一番影響を受けたのは『トバトバ』かもしれませんね。トバトバはマジですげえんだ。

あとゲームとロールの融合体として『フタハナ』もかなり影響を受けてはいるのですが、フタハナとは異なる形の『無人島で生きるゲーム』にしようと思っていたので意図的に避けている部分は多いです。

それはそれとして、無人島のゲームとしてフィーチャーしたときにサバイバルやクラフトと紐づけた方が最終的に太く面白くなるだろうな……という気持ちがあり、その辺りはやはり『マインクラフト』が多大に影響しているかもしれません。

自身の無人島観については『十五少年漂流記』が特に強いですが、『よゐこの無人島0円生活』とか『サバイバルキッズ』とかも影響しているかも……

トバトバ……御茶請 稔(ちゃうねん)さん作の簡易ギャンブル型交流ゲーム。coinを賭けて複数択から選ぶギャンブルを行い、稼いだcoinを用いてゲーム内で食事などを行うことができる。後継として『大トバトバ』が制作された。公式サイト
フタハナ……バトルロワイアル型AP制デスゲーム。勝者である『フタハナ』を生み出すために、無人島で7日間、殺し合いを繰り広げたり相方とイチャイチャしたりする。公式サイト
マインクラフト……Mojang社製のサンドボックスゲーム。アイテムを集めて組み合わせることでのサバイバルや、多様なブロックを配置して様々な建築を楽しむことができる。
十五少年漂流記……ジュール・ヴェルヌ作の冒険小説。無人島に漂流した15人の少年たちが協力して生活をする物語。
よゐこの無人島0円生活……テレビ朝日系列で不定期に放送されるバラエティ番組。コンビ芸人であるよゐこ(濱口優・有野晋哉)が無人島で2泊3日のサバイバル生活を行う番組。
サバイバルキッズ……コナミ社製のサバイバルシミュレーションゲーム。無人島に流れ着いた主人公が同じく流れ着いた仲間と共にサバイバル生活を行い、無人島からの脱出を目指すゲーム。

——『トバトバ』も『シマナガサレ』も、他のプレイヤーと「場」や「体験」を共有している一体感が魅力のゲームだと思います!

工夫した点と目指すゲーム像

——次に、ゲームシステムで工夫したところについて教えてください。

25氏:自分が強く影響を受けた『トバトバ』や『フタハナ』がそうであるように、とにかく『ゲームと交流の相互作用』『システムによるロールの説得力』、それと『意思疎通のコストの削減』を強く意識して作っています。

ゲームと交流の相互作用

『ゲームと交流の相互作用』についてですが、やっぱりゲームに取り組むことで交流に繋がり、交流をすることでゲームに新たな展開が生まれる……といった好循環が生まれて欲しいですよね。

サバイバルのゲームだけしたいなら『マインクラフト』をすればいいし、交流だけしたいならそういったPBCやなりチャなんて既にいっぱいあるわけでして。

だから、両方を行うことができてそれらが相互に作用しあうゲームでないと『シマナガサレ』である意味はあんまりないんです。

システムによるロールの説得力

『システムによるロールの説得力』ですが、「温泉スポット立てたよ!温泉ロールしようぜ!」のような『言っているだけの事象』ではなく、「温泉という施設を建造しそれに入ることで体力が回復する」からこそ生まれる『システムの後押しによる説得力』というのがあるんです。

TRPGのようにキャラクターがシステムに沿って動き、その中で交流を行うからこそ生まれるものがあるんですよね。TRPGやったことないんですけど。

意思疎通のコストを削減

そして『意思疎通のコストを削減』については先にも触れましたが、シマの場合はそれに加えてプレイヤーが感じた経験やゲームの状況をキャラクターにそのままフィードバックさせられるように工夫しています。

たとえばTIMEが無くて手が回らない時に、キャラクターにそのまま「時間がないので手伝って」と言わせられればこれ以上なくスムーズですし、探索やアクションとその成果もそのままキャラクターが言えるようにしています(一部はもう少し洗練が必要ですが)。

ゲームの課題

——次はもっとこうしたいとか、これを実装したかったとかといった課題について教えてください。

25氏:も~~~~~~~~~とにかくUI改善したいですよね。アイテムの作成やアクションといった至る所でプルダウンメニュー地獄だったので……。内部検索もできないのに項目数だけが肥大化していて、かなり操作しづらかったと思います。すまん。あと説明で長い文いっぱい書くせいで見た目悪くなっちゃうのも改善したいところです。いつもシヤマハミさんが良いサイトデザインを持ってきてくれるのに、それをいつも自分が破壊していて本当に申し訳ないです。

実装面だと、ツールの貸し借りはそれはそれでロールになるのですが、不便な点も多くて、たとえば『薪割り台』を設置したらその場所では斧を持ってなくても薪割りができる……みたいな方向にしたいな~と考えています。場所のフレーバーにもなりますしね。

本当は料理の拡充とかもしたいんですけど、レシピ無限すぎて手に負えないんですよね。いちいちレシピを作っていたら「タコスはあるのにブリートはないんですか?」とか「ケバブやシュラスコはないんですか?」とか言われると思うので、考えています。

タコス……肉と野菜を生地で挟んだメキシコ料理のこと。
ブリート……肉と野菜を生地で巻いたメキシコ料理のこと。
ケバブ……肉に串を打ってローストした中東の料理のこと。
シュラスコ……肉に串を打ってローストしたブラジルの料理のこと。

『うでらびゲー』のこれから

——『シマナガサレ』2期は未定としながらも開催の意向は示されていますが、今後の開催予定について教えてください。もしくは、それ以上に作りたいもの、やりたいことがあればお聞きしたいです(令和版の『百合鏡』とか……)。

25氏:『シマナガサレ』に関しては、2期に限らず開催できるならいつでも開催したい!という気持ちでいます。

ただ、お知らせ等でお伝えしたように他のGM様のゲームと兼ね合いもあるので、中々難しいところでもあります(具体的には少なくとも『暗夜迷宮』の開催中は避けたほうがいいかな~という機の伺いをしています)。

なので、他のゲームをやりつつのんびりとお待ちいただければ幸いです。

『マンション人狼』さんのようなルームごとに個別でゲーム進行が行われるようにする予定もなくはないのですが、自分はこういうゲームにおける「開催中のライブ感」が好きなので、もう数回は各種改良調整を行いつつこの形(一斉にプレイする方式)で開催し、頃合いを見て安定版として自由にプレイできる形を提供……といったロードマップを考えています(もちろん確定ではありませんが……)。

マンション人狼……ort氏作の変則ルールの人狼ツール。平面上の座標と被襲撃者の位置関係などから狼を推理するゲームだが、RPツールとしての運用も盛ん。

他のゲームに関してなのですが、これも正直いろいろな事をやってみたく。

たとえば最初にチャットシステムテストとして作った『こんオン』は、何かを攻略するようなゲームというよりはキャラクター交流疑似SNS的としてより特化させてみたいですし。

他には以前遊ばせて頂いた『Gladiators Station』にはとても感銘を受けたので(所謂往年のCGIゲーというのをやったことがなかったもので)、それをリスペクトしつつモダンナイズしたものを戦闘ログ生成の学習として作ってみたくもあります。自分は(全然やんないですけど)戦闘ロールが好きなので、それをシステム補佐できるような仕組みを取り入れて……みたいな。

あ!仰るように令和版『百合鏡』もやりたいですよね。『百合鏡』本当にいいゲームなんですけど、如何せんシステムやデザインが古くてとっつきにくいので布教しづらく……

Gladiators Station……剣闘士となり、週2回行われる大会の制覇や、他の剣闘士との草戦闘を行う。2000年代に流行した定期更新型(AP制)ゲーム。
百合鏡……2007年に公開テストを開始し、リセットやアップデートを繰り返しながら現在まで続いている定期更新型ゲーム。ラスボスである「魔王」が倒されることでリセットを迎える。公式サイト
25氏さんは『百合鏡』の第6期で魔王に勝利した「勇者」。現在開催中の第7期でも他のプレイヤーを引導するプレイングで、『百合鏡』の楽しさを布教している。

同じシステムにするとダーゼルさんに申し訳ないので、他のエッセンスも恐らくは加えると思いますが……『ゆけ!勇者』とか。『ドブハロ』とか。

今までは『シマ』開発を1つの目標として頑張っていたので、次はこのあたりを目標にしたさもあります。

他にも周辺の人々の話を聞いては「こういうのウケそうだな」とか「こういうのおもろそうだな」みたいな事は色々思いついてはいるのですが、人手も時間も全く足りず……家に1億円が沢山流れ着いてきてほしいものです。

あ、疲弊するので今年の誕生日は『にごパ』みたいな大きいことはしないと思うんですけど、なんかできたらいいですよね。してる余裕あるんかな。

『25’S PARTYBOX』(にごパ)

2022年12月~2023年1月に開催。『25th Anniversary.』と同じく『祝い』を司る即席世界『セレブレイティア』で、参加者は会場を飾り付けで賑やかにしたり、鏡餅を積み上げたり、ご馳走をみんなで飲み食いしたり、プレゼントを贈り合ったりしてお祝いを盛り上げた。

システムは『シマナガサレ』からも流用されており、『25th Anniversary.』と比べてマップが広くなり、豊富なアクションも追加された。名物はデスまんじゅう。

ゆけ!勇者……thachi氏作の放置型スマホRPGゲーム。キャラクターの装備を決めて出撃させ、リザルトを見て楽しむ。
ドブネズミ達のハローワールド(ドブハロ)……ブラウザとゲームクライアント(Windowsアプリ)を併用して遊ぶ定期更新型ゲーム。冒険結果はアプリで動的に表示される。容赦なくキャラが重傷化、更には死亡(ロスト)する。公式サイト

開発・運営を通じて得たもの

——ゲームの開発・運営をしていて楽しかったところについて教えてください。

25氏:『自分の理想のゲームを作れること』。なんだかんだこれが一番強いですね。自分と自分のキャラクターが一番居心地の良い空間を、自分がDIYできるということに喜びがあります。ただ技術力の関係でまだまだ完成には遠いので、今後も精進はします。

もちろんいろんな方に遊んで頂けて、各々のプレイヤーとそのキャラクターが様々な体験をして物語を紡いだということに有難さや感慨も沢山あります(何せ、この手のゲームは参加するだけで一苦労ですからね)。重ね重ね、ありがたい限りです。

——開発・運営を通して得たもの、学びについて教えてください。

25氏:自身がわりとウェブ系志望なので、スキルアップのきっかけとしてすごく有意義な経験を得させて頂いています。本番環境を動かすとはかくも大変、みたいな。

シヤマハミさんもウェブデザインパワーが上がって嬉しいと言っていましたし、うでらびさんも、数百人規模の参加者を捌くイベントの運営に携わるというのはそれだけでかけがえのない体験ですよね、的な足踏みをしていました。

あとはまあ月並みなんですが、開発者の視点で他のゲームを見られるようになって楽しいですよね。この処理何してるんだ!?とか、これたぶん真似できそうだな、とか。

——開発・運営をしていて辛いところについても伺えますか?

25氏:開催前後はほぼほぼコードにつきっきりになるので、死にます。『シマ』も『にごパ』もたぶんトータルだと100~300時間くらいはコードとにらめっこしているんじゃないでしょうか。なので大体の場合、ゲームが一段落すると死にます。

開催中によく「ご無理なさらず!」的な労いの言葉を頂いて本当にありがたいんですが、大体の場合、自分が無理をしないとユーザーの熱が落ち着いてしまう前に実装や不具合修正が間に合わないため、ご無理しています。すいません。

最後に……サプライズ!?

——最後に、『シマナガサレ』等を遊んでくれた人へのメッセージと、これからの「WdRbWorks」のゲームを遊んでくれる人へのメッセージをお願いします!

25氏:いつも遊んで頂きありがとうございます。うでらびゲーは、『IDEA CRAFTERs』みたいな自由入力システムチャットはないし、ヒサゲーやロキサゲーにあるような凝った戦闘システムもなく、「これなんなんだ?」というところも多いのですが、その上で付いてきて頂き本当に感謝が絶えません。自我と思想の強いゲームデザインではありますが、今後ともよろしくお願いします。

あと、よかったら他のGM様方のゲームや、特に新規GMのゲームがあれば積極的に遊んでみてください。いろんなフィードバックをして、そのGMにとっての良いゲームを作ることをみんなで応援することができれば、この界隈はもっと大きく盛り上げることができると思います。定期ゲやキャラ交流ゲーもまた、立派なインディーズゲームですからね。

ということで、オリジナルキャラクター登録型対戦剣闘CGI『BO5(仮)』5月31日頃続報予定です

お楽しみに。

——新タイトル『BO5(仮)』発表!!びっくりしました。5月末の続報が楽しみです本日はありがとうございました!

25氏:ありがとうございました! 次はうでらびさんの続報でお会いしましょう!

25氏
「WoodenRabbitWorks」のシステムおよびゲームデザイン担当。『つぶきゃら。』1期から入り、定期/APゲームやキャラクター交流ゲームの他にPBWやPBCなど多くのゲームに参加する中で、自らも類似ジャンルの制作を手掛けるようになる。25は四半から来ているらしい。 最近S+6になったが、未だにマヒマヒリゾートでは水没が相次いでいる。

この記事で使用している画像は、各ゲームのスクリーンショット及び25氏さんや「WdRbWorks」のTwitterから画像をお借りしているものです。

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