これまで『Mist of War(霧戦争)』『四畳半魔王城(四城半)』『BLACK TEA CONQUEST(てぃーこん)』など、数々の定期更新型ネットゲームを制作してきた”あの”霧のひと (TwitterID:@blacktea_game)氏の新作『ゼロの城砦(ゼロ城)』の第2期新規登録が始まった。
本日はそんな霧のひとにインタビューの時間を頂けたので、新しい、『ゼロ城』とはどのような物なのかを尋ねてみることにした。
――それでは1つ目の「ゼロ城」のテーマから
……の前に、霧のひとの自己紹介を頂いてもよろしいでしょうか?
霧のひと:どうも、霧のひとです。「霧のひと」という名前は定期ゲー処女作である「Mist of War」から取っています。それで、私の作るゲームを全て「霧のゲーム」と呼んでいます。
霧のゲームは「何か」を「アセンブルする(組み合わせる)」ゲームで、定期ゲーとしては少し変わっていますね。
――なるほど。定期ゲーでよく使われる、宣言などのことを「アセンブル」と言う文化は霧のひと発祥なんですね。
霧のひと:もともと、「Mist of War」開発のきっかけになった、途中で終わってしまった他GMさんの作品である「メカニカルドラグーン」の元ネタ……と思われるゲームの用語なのですが、完全に借りちゃっています。
――「メカニカルドラグーン」……初耳ですね。今でもその遺志を繋いでいると考えると、アセンブルという言葉にも歴史がありますね。
「ゼロ城」のテーマについて伺ってよろしいでしょうか?
霧のひと:「ゼロ城」のテーマは、「すぐ遊べる定期ゲー」です。未継続や、途中参加や、あるいはシステムをよく読み込めずに遊んでいても、不利にならない、というものがコンセプトです。
――というと? 複雑なルールを読み込まなくても、仕様変更などがあったりしても、今勝ちに行ける、自分なりのアセンブルを組みやすいということでしょうか?「機体状況」は魔法(城状況)になりましたよね。
霧のひと:もちろん、ルールを読み込んだ方が強いのはありますが、「弱い動き」をしてしまった後からでも、取り返せる、ということです。例えば、定期ゲーだと敗北することでステータスの伸びが悪くなり、取り返すのがさらに難しくなる悪循環があります。これは定期ゲーは時間をかけたレベリングができないせいです。そこで、蓄積されるプレイヤーのステータスを全廃したのです。ランキングも同様です
――それが「ゼロ城」で挑戦したことになるんですね。敗北は何度も経験したくないものですから、敗北しても不利にならないのはプレイヤーのモチベーションアップにつながりますね。城では付加がなくなったり、いわゆる「上位ランカー」といつでも対等な戦力になれる所が熱いところに思えます!
――「四城半」と第5期「霧戦争」から学んだ、改善した所などお聞かせください。
霧のひと:改善点は、全員が把握する必要のある、小難しいルールを減らしていったところです。「霧」で言うバックスタブ(*1)とか、「四城半」で言う在庫管理(*2)とかです。こういった特殊な挙動を全て魔法(機体状況・城状況)に集約し、ゆだねることで、考えることを全てアセンブルに投入することができます
*1 「霧戦争」における格闘ダメージを伸ばすための基本的な要素で接近判定成功時に発動する特殊効果のことである 接近判定とは…長くなるのでここでは割愛する
*2 「四城半」におけるマーケットから仕入れてどれだけ売れるかを試算する、難しい要素
――魔法の発動条件が機体状況、城状況、そのステータス依存であったり、ユニットを複数並べることで発動する物であったり、試遊会(*3)ではかなり簡単に作りたいアセンブルを考えることが出来ましたね。
ただしそのアセンブルをどうやったら組めるか……は、プレイヤーのセンス次第!簡素になっても考える余地がある、とても楽しみなバランスですね。
*3 テストプレイのことで、霧のひとは多くの場合、事前に試遊会を開き、ルールの変更や調整を行う。ゼロ城でも試遊会が行われた。
――世界観はどうでしょうか? 「ゼロ城」は「四城半」(*4)の後?前?
霧のひと:「ゼロ城」は「四城半」のラストで暴力が勝利した後の世界を描いています。「四城半」で破壊されたダンジョンの上にある、「底抜け天井」というダンジョンでのお話です。ここはとても冷たく乾燥していて、さびれた場所です。生き物はあまり生息していません
*4 「四城半」は「ゼロ城」の元になった定期ゲーのことであり、全15回の更新が行われた。2018年1月19日に第1回のアーカイブが上げられている
――魔王城に奈落があったりするのも底抜け天井という場所だからなんですかね?
霧のひと:奈落、というのは魔王の力の渦巻く場所で、どちらかというとRPGでいうダークゾーンのイメージでしたね……! 底抜け天井は落ちたら死ぬのは同じです
――なるほど。全ての城が空を飛んでいるイメージになっていました。浮遊城もあるかもしれませんが。
霧のひと:底抜け天井は、ボロボロの屋根裏部屋、と思っていただければ幸いです。一部浮かんでいるところもあります
――なるほど……本当に寂れた場所なんですね。「霧戦争」(*5)との繋がりはあるんでしょうか?
*5 正式名称「Mist of War」。霧のひとのTwitterによると、2011年7月頃から開発が始まり、2012年3月5日に最初のテスト更新を迎えた。それから7年も更新が続いていることになる
霧のひと:「四城半」の時代から「ゼロ城」まで500年が過ぎています。「ゼロ城」から「霧戦争」の時代まで、2700年程度が経過していますね。まさに、神話の時代から現代に至る物語です。
――500年……!そして更に2700年……!かなりの長い年月の物語なんですね。
霧のひと:いまから3000年前を考えると、神様とか超古代文明とかの時代で、それがリアルに存在していた世界で、その記憶が薄れ、メカとSFの世界へ変わってしまった、という……(ろくろ)
――その辺りのお話を魅力的なNPC達が話してくれるのも、「霧のゲーム」の面白さですね。
霧のひと:ありがたいです。
――これからの「ゼロ城」、特に調整なんかはどういうように行われるのでしょう? 試遊会では「ジャイアント染め」(城をジャイアントばかりで構成すること)がとんでもない金額を稼いでいましたが……。
霧のひと:「ゼロ城」の調整は、魔法の調整を軸に行います。そのために、戦術を魔法に依存する形に変えており、いわば、無数に枝分かれしていたガス管を元栓で管理するようなものです。元栓さえ締めれば、ガス漏れを最低限に抑えられます。
――強い魔法を修正、弱い魔法を強化するだけでバランスが取れるようになる形にしてあるんですね。いまいち今だとパッとしなくても、強くなる魔法が現れたりするのに期待が膨らみますね。
これからの定期ゲームはどうなると思いますか?長い間定期ゲーのGMをしている霧のひとのご意見をお聞かせください。
霧のひと:これからの定期ゲーは、希望を言うならば、もっとたくさんの作品が運営されてほしいですね。いま、世間にはたくさんの娯楽があり、全てのゲームを遊ぶことはできませんが、その中でも「定期ゲー」でしかできない体験があれば、定期ゲーは続いていくのだと思います。新しいGMさんは、急な人気や期待を背負ってしまったり、逆にプレイヤーが集まらず失望したりしてしまうかもしれませんが、長い目で見て作品を育てていってほしいです。森にはたくさんの生き物が住むように、そういった森が豊かな森であるように……。
――森……豊かな森……良いですね。本日はありがとうございました。最後に「ゼロ城」や次の「霧戦争」を待つ人に対して何か一言を頂けますか?
霧のひと:霧のゲームは……今回も自信を持ってお送りします!楽しんでいってね!そして感謝を……本日はありがとうございました!
※3月19日 バックスタブを基本的な要素に修正