9月13日、小説家・杉井光 @hikarus225 さんの小説『羊殺しの巫女たち』の発売を記念したトークショー&サイン会が、東京都稲城市の書店「コーチャンフォー若葉台店」で開催された。
『羊殺しの巫女たち』は8月27日に単行本が発売されたホラーミステリで、6人の少女が早蕨部村で祀られている「おひつじ様」への信仰と因習に立ち向かう青春物語でもある。
書店の中心部に設けられたステージはオープンに開かれており、整理券の所持者だけでなく、整理券を持たない人も立ち見でトークショーに参加することができた。
杉井光さんは稲城市の出身で、トークは「ただいま」という挨拶と共に、地元の話題からスタート。現在も実家が稲城市内にあるものの、転居したため使用する路線も異なっており、今回若葉台に来るために京王線を使用したことで、故郷に帰ってきた感じがしたという。
スティーブン・キングの『IT』のオマージュ
「羊殺しの巫女たち」というタイトルも早々に決まっていたという本作は、スティーブン・キングの『IT』をオマージュしており、ホラー作品として温めていた唯一のアイデアと、少女が持つ美しさや儚さといった要素を合わせて作られた。
『IT』を読んだのは杉井さんが20代の頃、作家になるより前に読んだそうで、子どもたちが手を繋いで丸くなるシーンが印象的で、本作のクライマックスでも、少女たちが手を繋いで丸く輪を作るシーンを描くことは決めていたそうだ。
『羊殺しの巫女たち』で描いた内容と自身の体験
トークショーは、今日本を受け取ってこれから読む人も多いという想定で、ネタバレに配慮し、内容をまだ知らない人にも配慮しながら行われた。
本作では、1991年の話と、2003年の2つの未年のストーリーを行き来しながら進行する。杉井さんは作中の主人公たちと同年代で、1991年のことを書くにあたっては、当時のことを思い出して書けると思っていたが、実際には苦労して調べることになった。なお、1991年は横綱・千代の富士が引退した年だったが、そのネタは結局使わなかった。
『羊殺しの巫女たち』では、少女たちが夜の川に入るシーンがあるが、稲城で過ごした子ども時代に、川辺に降りたときの体験を参考にしている。また、暗渠に対する恐怖心も自分の体験を元にしているとのことだった。
「読者に注目して欲しい登場人物はいるか」という質問には、一番好きな人物というのは決まっていないが、ムードメーカーの夏帆はストーリーを進めてくれる存在で、書いていて楽しかったこと、一方で書きづらかったのは主人公だったと語った。
また、話題作「世界でいちばん透きとおった物語」では、父親への愛をストレートに書いているので、書いていて照れくさかったが、それと比較して「羊殺しの巫女たち」は女性の一人称なので、自分とは切り離して書くことができたという。
書いているのは一貫して、人生で一番美しい瞬間を描く青春小説
杉井さんの作品では、ミステリーの種明かしがストーリーの中で自然に語られているというということを司会者から提起。それに対しては、ミステリの謎を明かし、答え合わせをするときには、読者がびっくりすることで、心のシールドが下がる。そのため、真相を明かす際には読者を驚かせるだけだともったいないので、ストーリーで泣かせたりさせたいと考えていると語った。
今回の作品は一般向けの文芸書だが、ライトノベルであったり一般書であったりと、活動の幅が広がってきたことで、執筆する作品のバリエーションは広がっているが、作家としての姿勢は、青春小説を書いてきたという点で一貫して変わっておらず、少年少女という、きらめきが一番美しい瞬間、そしてその儚さを書いていると語った。
ミステリ、高校時代、作品作り……バラエティに富んだ会場からの質問
トークショーの後半では、挙手にて会場からの質問を受け付けた。最初はなかなか手が挙がりにくかったものの、高校時代の後輩を見つけた杉井さんが話を振って場を繋ぐ場面もあり、予定していた時間に10を超える質疑応答が行われた。
ミステリ作品を好んで読んでいるという方からは、「核心を決めてから作品を作るのか」という質問があり、「読者を驚かせる部分を最初に作り、バームクーヘンのように広げている」という、核となる部分から広げていくという作り方をしていることを答えた。
「羊殺しの巫女たち」と「世界でいちばん透きとおった物語」以外の過去のオススメ作品について問われると、その時の最新作が常に最高の作品という回答。具体的には、6月10日に発売した「天嬢天華生徒会プリフェイズ」と、「楽園ノイズ」7巻(いずれもKADOKAWA/電撃文庫)を挙げた。
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ホラーが苦手な人でも読めるスティーブン・キングの作品のオススメがあれば教えて欲しいという質問には、『IT』も怖くないが、『スタンド・バイ・ミー』がオススメで、2つの作品が1冊に入っていて両方ともオススメの作品ということだった。
次のミステリ作品の題材について問われると、超能力絡みのミステリで連載していたものが来年出版予定で、また、まだ一文字も書いていないが、音楽ミステリの作品も近々出す予定とのことで、「ご期待ください」と話した。
スランプやその乗り越え方について聞かれた際には、これまでアイデアが何も浮かばないということは無いということはなく、アイデアは死ぬまでに書ききれないほどあると話した。ただ、文章を後回しにして飛ばして書くことができないので、行き詰まったときには気分転換をせず、ひたすらディスプレイの前で画面を見続けるという。具体的には、ギャグが浮かばなくて行き詰まることもあるということだった。「やらないとやる気は出ない」と考えているという言葉に、質問者も肝に銘じると応じた。
一番苦労したり、思い出深い作品については、小説は楽に書けるものではなく、常に最新の作品での苦労を思い浮かべるという。過去作から挙げるとすると『神様のメモ帳』の1巻は商業作品での初めての男性一人称の作品で、何度も書き直したことが印象に残っている。
最後に、高校時代の杉井さんを知る人から「高校時代の一番の思い出」を聞かれて、作品の題材にも何度もなっている音楽部と生徒会が、どちらも一番の思い出であることを話した。トークショーの参加者には杉井さんが高校3年生のときの1年生という生徒会の後輩の方もおり、マイクを向けられると、杉井さんについて、面倒見が良く、麻雀を教わることもあったというエピソードを語った。
トークショー終了後はサイン会を実施
25分ほどでトークショーは終了し、サイン会へと会場の配置転換。まず整理番号順に整列し、その後当日購入者もサインをしてもらうことができた。「羊殺しの巫女たち」に、杉井さんに金色か銀色のペンで宛名とサインを書いていただくと共に、お話をさせていただいた。また、2ショット撮影もOKということで、スタッフの方に、杉井さんとの2ショットを撮影していただいた。
サイン会開始後15分ほどで会場を離れたが、その時にはサイン会の列が更に伸びていたので、のべ50名程度が集まっていたのではないかと思う。
『羊殺しの巫女たち』書誌情報
- 著者:杉井光
- 発売日:2025年8月27日(水) ※電子書籍同日配信
- 定価:1,980円(本体1,800円+税)
- 頁数:400頁
- 体裁:四六判並製 単行本
- 装幀:鈴木久美
- 装画:遠田志帆
- ISBN: 9784041151273
- 発行:株式会社KADOKAWA
https://www.kadokawa.co.jp/product/322211000505
「十二年後、次の祭りの日に、ここでまた集まろうよ。みんなで」
山に囲まれた早蕨部村で12歳を迎える6人の少女たちは、未年にのみ行われる祭りの巫女に任命される。それは繁栄と災厄をもたらす「おひつじ様」を迎えるため、村の有力者たちが代々守ってきた慣習だった。祭りの日、彼女たちは慣習に隠された本当の意味を知る――。そして12年後、24歳になった彼女たちは、村の習わしを壊すというかつての約束を果たすため、村に集う。脈々と受け継がれた村の恐るべき慣習と、少女たちの運命が交錯する中、山で異様な死体が発見される。
あなたは、真実に気づくことができるか。衝撃のホラーミステリが幕を開ける!
『世界でいちばん透きとおった物語』著者が放つ【ネタバレ厳禁&二度読み必至】のホラーミステリ! 杉井 光『羊殺しの巫女たち』 8月27日発売 より
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