《継続登録》感想: Eno.4「真銀の庭」黄昏のアストローナ

ケイさんのサークル「真銀の庭」(Eno.4)では定期更新型ゲーム「DARK KINGDOM2」(DK2) 第5期の回顧録「黄昏のアストローナ」を購入しました。DK3プレイヤーであれば、このサークル名もPT名として見覚えがあるのではないでしょうか。

「黄昏のアストローナ」は、《継続登録》終了後も「真銀の庭」のBOOTHで購入することができます(2022年5月8日現在)。

「黄昏のアストローナ」告知ツイート。
表紙イラストはDK2第5期では「花束」で活躍した壱悸ユカリ(@itsuki_93)さんによるもの!

黄昏のアストローナ

DK2の第5期が終了したのは2005年1月。期の開始の2003年から数えると、実にもうすぐ20年が経ちます。本書は「リセット遅延組織 Load of Lord」を主宰していた筆者によるゲーム概要と回顧録、そして第5期の多くの有名組織・プレイヤーによる寄稿・インタビュー等で構成されている、B5サイズ、84ページの本です。

BOOTHのページから「もくじ」(2枚目の画像)で一覧を見ていただくのが良いかと思いますが、その一部を抜粋すると、大陸最強の人斬りとも言われた「零時」のネムリさん、苛烈な理想を掲げたPKK「誅戮十字軍」団長の妃騎楓さん、DK2・DK3で常に最前線の覇者として君臨していた仮面の道士ことサリエル=アーシュレイさん、他にも高名な人斬り組織、「Leaf of Truth」に「IF」等が名を連ねます。

表紙にも姿がある「レヴァと愉快な仲間たち」の”銀惑の炎術師”レヴァリスさんや、「株式会社TTIプロダクション」「メナス」「人斬り結社デスフラッター」等の組織名はDK2未参加でも、DK3に参加していたら聞いたことがあるのではないかと思います。


DK2というゲームは、対人戦においてもボス戦においても、当時は知識や情報自体が非常に重要であったために、多くの情報は秘匿されていたり、口伝であったりしました。また、それぞれの思惑や考えについても、個人サイトやクローズドなコミュニティでのみ共有されていたり、そもそも語られることが無かったりしていました。

そして、この本で初めて明かされた「秘密」や「謎」は少なくありません。それはシステム的なものであったり、個人的なものであったりしますが、ただの「少人数しか知らないこと」ではなく、「秘密」や「謎」たり得たのは、ゲームや組織、人物たちが魅力的だったからこそだと思います。

そして「組織」や「人」を魅力的な存在に押し上げた立役者は「新聞」の存在でした。情報を得るため、ないし純粋に楽しむためにプレイヤーたちが読み漁った新聞サイトでは、人斬り、レベル覇者、ボスアタッカーといったパーティが取り上げられていました。

第5期を代表する新聞サイト「マガ動物園日誌」は、「邪(マガ)の血族」の族長、華海倫さんこと、ラノベ作家の杉井光(@hikarus225)さんによって書かれていました。そして本書には第5期の組織としての「邪の血族」の紹介のみならず、「マガ動物園日誌 令和版」も収録されています。そこに「『まったくの他人の結果を見て楽しむ』という文化を広めるためのハブになれた自覚はあります」という記述があります。本書がただの内訳のデータブックではなく、面白い読み物になっているのは、登場する人物や組織が、それぞれ顕著な成果を挙げていたことは勿論、新聞を通して皆「有名」であるということが挙げられます。

「黄昏のアストローナ」に寄稿・掲載されている人物や組織は全て、有名人・有名組織であることは間違いありません。多くが2つ以上のパーティから構成され、文字通り「組織」として機能していたこと(そしてその苦労)が、組織紹介からも読み取れます。

もちろん、DK2の第5期で活躍した全ての人物や組織が掲載されているわけではありませんが(突然、当時の「花形」である人斬りや覇者以外にも、個性的な多くのキャラクターや場所が存在しました)、それもまた、アストローナに心血を注いだプレイヤーが数多いたのだということを思い起こさせました。

また、対人戦やボス戦の結果のみならず、アストローナ暦何年の出来事ということが、組織ごとに振り返られています。組織のメンバーや構成、それぞれの関わりなどについて、この先ネットの海から情報が消えてしまっても、本書を通じて振り返ることができるという点で、貴重な資料とも言えます。


この本の中ではたびたびEno.の大小による運命の分かれ道が記述されています。若いEno.を取ろうと、緊張しながらスタンバイしていたことを思い出します。最近のゲームではEno.の若さは目立つ以上の実利はあまりないと思いますが、DK2は文字通り生死を分かつ、凄まじくシビアなゲームでした。こうしたシステム面の振り返りからも、当時の参加者であれば自分の体験と重ねて、懐かしい気持ちになれるのではないでしょうか。

最後に、本書中でも「当時の友人に10年以上ぶりに連絡を取った」という話や、Twitter上でもDK2の話題を見ることができました。この本がこれらの「きっかけ」を令和の時代に作ったこと、そしてそのきっかけは《継続登録》というイベントの存在だったことは面白く、そして素晴らしいことだと思いました。

「黄昏のアストローナ」は2022年5月8日現在、「真銀の庭」のBOOTHで購入することができます。現在のところ、電子版はなく、物理書籍のみの取扱いとなっています。

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