「騒乱イバラシティ」振り返り

「ハザマ」の歩き方いろいろ

ゲームで提示されているプレイヤーキャラクターの共通目的は「相手勢力よりも世界影響力を高めること」。

ただし対人戦で相手勢力のプレイヤーキャラクターと対戦して世界影響力を奪取しなくても、ハザマに存在する敵勢力(NPC)を倒すことで世界影響力を高めることができたし、「ロスト」と呼ばれるNPCの願いを叶えることで、能力値を上げることもできた。マップの前線を開拓してチェックポイントを開放することで、味方もその地点にワープすることができるようになり、また初イベントを開拓することでも能力値にボーナスが入ることから、パーティの目的になりえた。

自分の所属していたパーティの場合、序盤から何を優先するか(最短距離で次のチェックポイントを目指すのか、ロストの願いを叶えるのか)でも意見が分かれるところだったが、途中(第18回更新)から強制的に勢力間の対人戦が発生するようになると、更に考え方やモチベーションの相違が出てきてしまった。 この点、御巫咲絢さんの今年のアドベントカレンダー記事の冒頭「なぜ対人戦をしないのか」というのが非常に共感できる内容だった。

自分自身は、個人としては強制的な対人戦はどちらかといえば歓迎するタイプだが、もともと対人戦をしない目的で集まったメンバーであり、対人戦を好まないメンバーは辛さを感じていて、一緒に組み続けること自体が辛くなってしまった。結局パーティは解散し、それぞれの道を歩むことになった。

こうして、途中(後半)でゼロからの再出発になったのだが、ここから最終更新~閉鎖にかけては、新しい仲間と出会い、自分が楽しいことだけを選択・追及して遊ぶことができて、最後まで満足のいくプレイ……という言葉では足りない、とても素晴らしい仲間とのエンディングを迎えることができた。「イバラシティ」というゲーム自体は、予定されたストーリーが描き切られなかったものかもしれない。それでも「終わりよければすべてよし」と言うように、楽しみを見出し続けたプレイヤーキャラクターとともに最終更新を楽しく迎えられたのは幸せなことで、イバラシティという場を与えてくれたsymalisさんには改めて感謝したい。途中で別れたメンバーも完走し、楽しんでいたようなのでホッとした。

イバラシティ勢力とアンジニティ勢力の間でアイテムやお金の奪い合いは発生せず、負けた方がチェックポイントまで戻されるといったペナルティも発生しない。対人戦=PKという過去作に比べれば、勝ち負けの嬉しさと悔しさはささやかなもので、『練習試合』みたいな感じだった。世界影響力の数字が多いどちらかの勢力の「勝ち」ではない、第3のエンディングがあるのでは?と思っていたところもあったので、戦闘の勝ち負けにはこだわりを持たなかった(持てなかった)。

「イバラシティ」と「イバラモード」

リアルタイムでの交流の舞台「イバラシティ」。プレイヤーが作った地点も、シティマップ上にアイコンが表示されて、リアルに”街”が感じられた。学校の中の教室や、建物の中の店舗といった入れ子も表現されていた。公式スポットも茨城に元ネタがある地点ばかり。

本物の茨城。写真は、ミナト区にある観覧車がシンボルの「ミナト海浜公園」のモデルになっているひたちなか市の「国営ひたち海浜公園」。4月~5月にかけて、可憐な青い花が咲き乱れる「ネモフィラの丘」が広がる。画像提供:「写真AC」

自分自身は「イバラシティ」での交流と「ハザマ」での交流を上手くクロスオーバーすることができなかったのだが、イバラシティで交流を深めたうえで、ハザマで葛藤を感じられるロールプレイができた人を羨ましく思う。

イバラシティでの企画で印象に残っているのは「イバラモード」だ。イバラシティ内のファッションブランドを作り、コミッションの依頼を受けてキャラクターがそのブランドの服をまとう。

企画主のハセさんのツイート。ツリーにまとめのTogetterもある。

たくさんのブランドが立ち上がって、皆さんのデザインの引き出しに感服したり、イバラモールの中に店舗のプレイス(実店舗)があったり、キャラ絵がたくさん見られたり、買い物をするキャラクターたちのロールが見られたり。自分も依頼をさせていただいたり、お気に入りのキャラクターの依頼を見守っていたが、キャラクターに「好きなブランド」や「お店で選んだ新しい服」という新しい属性がついて、キャラクターもプレイヤーも、ワクワクする楽しい気持ちを共有することができた。

終わりに

20年から15年ほど前は、「定期更新型ゲーム」の中で、りすゲは「一風変わった」ゲームだった。「タワムレガキ」によって、りすゲのプレイヤーは定期更新型ゲームに加えてAP制ゲームも遊ぶようになり、「つぶきゃら」はコミュニティのユーザー数を大きく広げた。「セレッシャルコール」を経て「言の葉の樹の下で」で(「Rの手記」でも)「定期更新型ゲーム」という括りの中に「AP制ゲーム」を含めることにした。

2021年、定期更新型ゲームのスタンダード、そしてAP制ゲームの礎となった、りすゲは幕を下ろした。しかし、これからもりすゲの影響は数多くのゲームに見られるだろう。symalisさんの健康状態の回復と、これからの楽しいゲームライフを応援したい。