ホワイトレター1923年3月「萌芽の候、春雷落つ夜に白梅の揺らぐ」【リーフNo.09-0020】

この記事は株式会社アルパカコネクトの運営するPBW「ホワイトレター」第9回シナリオに関する内容です。3月も多人数での行動で約8,300字もの内容でした。内容はホワイトレター内のノートでも公開しています(担当マスター:STANZAさま)。

墨辰殿地下調査に【墨】タグの仲間たちとともに参加しました。

【リーフNo.09-0020】
●予備調査と下準備

 シェラザード様
 反戦の聖女様

 お手紙有難うございました! まだ見つけられなくてごめんなさい。
 でもきっと近付いてる、きっと会ってお話出来るって信じてこのお手紙を送ります!
 お会い出来てみんなで仲良くお話出来るの楽しみにしてます!

 ファナン・ハリーリー

「うん、こんな感じかな! ねえバドルお兄ちゃん、どう?」
 手紙を見せられ、バドル=アーケイナは「素直で良い手紙だな!」と破顔する。
 果たして、その想いは届くだろうか。
「困ってるなら助けなきゃって思うけどさ、まず探さなきゃならないの「わたしをみつけて」が問題だよな」
 これから潜る場所に、その手掛かりがありますように。

「えっ、いいの!?」
 目の前に座ったトゥーリとお菓子の山を交互に見て、レナ・ドレッセルは瞳を輝かせた。
「アタシに付き合って貰うんだから、奢るのは当然でしょ?」
 本当は凹んでいるレナを元気付けようと考えた事だが、そこは黙っているのが粋というものだ。
「レナが美味しいご飯巡りにハマってるって聞いて、アタシもやってみたくなったんだ」
 それに完全な奢りというわけでもない。
「その代わり、写真撮らせてくれない?」
「私の? いいけど、なんで?」
「その羽根飾り、ちょっと調べてみたいんだ」
 似た飾りを付けた人影を見たという情報がある。
 そこにアルフライラとの関連性を感じ、火山を祀る巫女が何か知らないか尋ねてみるつもりなのだ。
「そっか、これやっぱりアルフライラ由来なんだ……」
 指先で羽根飾りに触れ、レナは少し寂しげな笑みを浮かべる。
「両親の形見だけど、どういうものなのか全然わかんなくて」
「うん、だから調べてみるよ。アタシちょっとした伝手が【教授会】に研究者を紹介して貰う予定があるんだ」
 それより今は、このお菓子の山だ。
 二人は怒涛の勢いで、それを切り崩し始めた。

「うわあ、ほんとに真っ暗だねぇ!」
 バドルに手を引かれ、ファナンは墨辰殿の地下に降りて行く。
「だろ? そこがなんか引っかかるんだよな」
「え、どこが?」
「真っ暗だってとこ」
 階段の途中で足を止め、バドルは来た方を振り返った。
「地下にこんなでかい施設があるなら、地上に灯り取りの窓くらいあっても良さそうなもんだろ?」
 だが実際は、背後から差し込む光の他に地下空間を照らすものはない。
「それでちょっと思ったんだ。墨辰殿の『辰』って天体も意味してるらしいし、ここには『光』を鍵にしたカラクリがあるかもって」
「星の光、みたいなこと?」
 頷いて、バドルは再び歩き出す。
「そろそろ明かり点けた方が良いな」
「うん、わかった!」
 ファナンが別チームに調達して貰ったランタンに火を灯す。
 途端に周囲の様子がはっきりと見え、広さや奥行きが実感された。
「地下ってこんな風になってるんだあ、すごーい……!」
 興味津々の様子でキョロキョロしながら、ファナンはバドルに導かれるままに歩を進めて行った。

「何か見つかるかなあ、おばけなんかもいたりして!」
「おばけはともかく、こないだの怪しい人影みたいなのが潜んでるかもしれないな」
 だが幸い、おばけにも怪しい何者かにも出くわすことなく、二人は通路の奥へ奥へと進んで行く。
 分かれ道の右手には、いくつものドアが整然と並んでいた。
「ちょっと失礼……」
 手前のドアをそっと開け、二人は中を覗いてみる。
「寮とかアパートの部屋みたいだね」
 ファナンの言う通り、寝台や机などが置かれたそこは一人用の居住スペースに見えた。
 ただ、生活感はない。
「入居待ちの空室って感じだな」
 通路の奥には台所やトイレらしき部屋もあったが、生活感のなさは共通していた。
 左手の道には保管庫が並んでいるようだった。
 その多くには石版が保管されていたが、他に何か大切な物が眠る部屋もあるようだ。
「バドルお兄ちゃん、入って調べてみる?」
「いや、何か見付けても触ったり動かしたりするな現状維持って言われてるからな」
 二人の任務は本格調査を前にした下調べとマッピングだ。
「でもさっきドア開けちゃったよ?」
「……ま、それくらいはいいだろ」

 水晶光を屈折させるもの光を反射するものなど、カラクリに関係しそうな物は見付からなかった――少なくとも見える範囲では。
 特に目立ったトラブルも怪しい現象もなく、調査を終えた二人は地上へ戻る。
「暗いのによく頑張ったな。マジマベだぜ!」
「うん、だってバドルお兄ちゃんと一緒だもん! 全然怖くなかったよ!」
 繋いだ手に勇気を貰っていたのは自分かもしれないと思いつつ、バドルは笑顔で頷き返した。

 二人が持ち帰ったデータを元に地図が清書され、仲間達や協力する他のチーム、同行する学者達に配られる。
 準備が整ったら、本格的に調査開始だ。

●講堂にて

 エルメリンダ・メレンデスはまず、地下への出入り口に鳴子を仕掛け、同行者達にそれを周知した。
 もしそれが鳴る事があれば、それは部外者の侵入を意味――

 カランコロンカラン!

「あっ、今のは俺ッス!」
 盛大に鳴り出したそれを慌てて止め、サフィーロが追い付いて来る。
「すんません、ついうっかり引っ掛けちゃって」
 恐縮する弟子に、師匠は静かに首を振った。
「この暗さですから、無理もありません」
 闇の中から細い手が伸びて、サフィーロの指先に触れた。
「私は暗視で見えていますから、サフィの手を引いていきますね。転ばないようにだけ気をつけて」
「手……あっ、そ、そっすね!! あ、ありがとっす……」
 互いの指先を滑らせて、しっかりと握り合わせる。
 まるで心臓が掌にあるように、触れ合う肌が熱く脈打つように感じられた。

(調査中に何をしているのでしょうか私は……でも、こうして手を繋ぐと心強い、ですね)
 手を繋ぎたいのが本心で、エスコートは口実だと自覚している師匠。
(師匠の手、柔らけー……いや、何考えてるんだ俺! 今は仕事に集中……!)
 これは単なる安全対策だと思いつつ、何故かドキドキが止まらない弟子。
 片思い中の彼女と己の想いに無自覚な彼は、ゆっくりと闇の中に吸い込まれて行く。

「師匠、気を付けてくださいっす……怖いのは侵入者だけじゃないっすから」
 単なる侵入者であれば、たとえ墨辰殿を廃墟にしようと護り抜く覚悟はあるし、その為の鍛錬も積んできた。
 トラップは自分が先にかかってしまえば、少なくとも彼女だけは助かるだろう。
 だが物理攻撃が効かない相手や超常現象に対しては分が悪い。
(なんて言ってる場合じゃねぇな)
 壁が崩れようが瓦礫が降ろうが、この身を挺してでも彼女だけは無傷で地上に帰す。
 自然、サフィーロが彼女の半歩先を行く形になった。
 それではエスコートの意味がないとは、どちらも言わない。
 怪しい場所ではエルメリンダが握った手に力を込め、危険を知らせる。
 まるで繋いだ手を通して感覚を共有するように、サフィーロには闇の中でも目が見えているような気がした。
 安全を確認したら、再び前へ。

 やがて二人は目的の場所――便宜的に「講堂」と名付けられた空間に出た。
 両開きの扉は既に開け放たれ、内部は多数のランタンで明るく照らされていた。
 もう手を繋ぐ理由はない。
 それでも彼女の目が明るさに慣れるまではと、二人はそのまま戸口に立ち続ける。
 やがてどちらからともなく手を離し、エルメリンダは先に来ていた人影に歩み寄り、サフィーロは警戒の為にその場に留まった。

 エルメリンダが近付いて行くと、その人影――リュリュ=ソレイユはゆっくりと振り返った。
 その手にはスケッチブックと絵筆が握られている。
「写真で残すのも良いと思いますけれど」
 紙の上には既に、講堂の鳥瞰図が出来上がっていた。
「こうして記録しておけば、現実では見られないような角度から見る事も出来ますし」
 実際には見えない部分は想像で補うしかないが、写真記録と合わせれば信頼性は格段に増すだろう。
それに色を付けられるのも、絵の利点ですねカラー写真はとても高価で貴重な上に、精度があまり良くないのだ
 今、彼女は講堂の中央に置かれた台座と、その上の盃を描いている所だった。
 講堂内の床には、台座を中心に広がるように何本もの溝がある。
 盃に液体を注ぐとそれが溝を伝って流れ出し、四方に広がる仕組みになっているらしい。
 それで何が起きるのか、それを確かめる為に、今からエルメリンダが実験を行う手筈になっていた。
 そこで起きる現象と結果を記録する事は勿論だが、実験器具台座や盃のビフォーアフターを記録しておく事も同じくらい重要だ。

「終わりました」
 リュリュの言葉に頷き、エルメリンダはサフィーロを振り返る。
「サフィ、道具をお願いします」
 それに応えてバックパックから取り出されたのは、真水に東方のアルコール度数の高い火が点く位の酒、それに点火用のマッチ。
 それとは別に消火用の水を持って、サフィーロは師匠の傍らに立つ。
 危険な事はしてほしくないが、彼女の望みは叶えたい。
 名探偵『白蛇』がそれを望むなら、自分はそれを全力で支えるだけだ。

 実験の様子を、リュリュは少し距離を置いて観察しつつ絵にして行く。
 それが一通り終わると、次は他の者達が思い思いに実験や検証を始めた。

「ここが墨辰殿の中心というわけか」
 シルエイティ・ワンビアが講堂の内部を見渡す。
 部屋の造りから見て、ここで何か儀式を行っていた可能性は高い。
 他の場所も一通り見て来たが、この場所だけが明らかに非日常の空気を醸していた。
(私室は、儀式を行う者の居住部屋だろうか? 何故こんな薄暗い地下に、それも外部から隠された形で?)
 壁画には儀式の担い手と思われる巫女達の生活の様子も描かれていた。
 それは場所が地下空間である事を除けば、ごく普通の宗教的な団体に於ける集団生活と言って良いものに思われた。
 外を出歩いている場面が描かれたものもある為、幽閉の線は薄いだろう。
 中には皆で講堂に集まり、祈りを捧げている様子を描いた壁画もあった。
(具体的な手順は不明だが、形だけでも試してみる価値はあるか)
 以前に調べた『幸せの千年手紙』には「みんなで祈れば願いが叶う」とあった。
 これは巫女や代表者などの特別な存在は必要ないと解釈して良いだろう。
 ならば今ここで再現が出来るのではないだろうか。
「明かりを落として貰えるか」
 ワンビアの声に応え、辺りが闇に包まれる。
 この状態で他の場所を調べた時と同じように、この講堂内でも「闇の中でしか見えない何か」が見付かる事はなかった。
 それでも、この場所には何かがある筈だ。
 そうでなければ、儀式の様子をわざわざ壁画にして残そうとは思わないだろう。
(『聖女』や『魔女』が特定の個人ではなく『現象』であれば、巫女の様な役割はいなくても術の実現は可能と言う事になる)
 発動の鍵が場所にあるならば、何らかの現象が起きる筈だ。
「とりあえず簡単なもので試してみるか」

『明るくなれ』

 闇の中で皆がそれを願い、祈る。
 だが何も起きなかった。

 少なくとも今は、何も。

「聖女の手紙も反応なしか?」
 バドルに問われ、ファナンはしょんぼりと項垂れた。
「前にちょっと反応あったし、場所や状況が変われば反応も変わるかなって思ったけど」
 結果はまさかの無反応。
 これでは書いて来た手紙も渡せそうにない。
「この場所、聖女様とは縁がないって事なのかな」
「かもな」
 停戦の失効までもう時間がないのに、聖女はいつまでこんな隠れんぼを続けるつもりなのだろう。
 ただ、別の方面では収穫があった。
「宝探し、オレ達も行こうぜ!」
「うん!」
 バドルが手を引くと、ファナンの顔がパッと明るくなる。
 事前調査では見るだけだった部屋も、今ならきっと入り放題だ。

●全体調査

 メルヴィル クワンは、壁画のひとつをじっと見つめていた。
 例の「講堂で祈りを捧げる様子を描いたもの」だ。
 友人からの情報と、古代アルフライラ研究の書と照らし合わせた結果、それは『火山を鎮める儀式』の様子ではないかとの予想が立てられていた。
 柱についても存在自体は確認が出来た。
 数は恐らくイェールマウトの施設や紋床殿と同じく8本だろう。
(きっと魔術的に意味のある数字なのでしょうね)
 全貌を確認するには墨辰殿を壊す必要があるとかで、それ以上の事は調べられなかったが。
 それでも、思考の核とするには充分な情報を得られた。
(わざわざ柱を用意したと言う事は、紋床殿同様何か儀式を起こしたかったはず)
 それは壁画からも見て取れるし、大目録で調べた石版の内容古代言語の翻訳とも一致する。
 倉庫に保管されていた石版は手紙として使われていたらしく、そのひとつに儀式の請願書のようなものがあったのだ。
(どうやら、どこかの村落から巫女と思しき相手に対して送られたものだったようですね)
 何らかの儀式を執り行って貰うように頼んでいたと読める文面だった。
(しかし、今現在こうやって封じているということは、儀式を起こさせないようにする為に? 儀式を起こした後に封じた……)
 メルヴィルは火山を描いた壁画に目を向ける。
(もしかして、過去にこれを使った儀式が行われ、その結果が危険すぎて封じた……とか?)
 具体的には――
(火山信仰……もしかして火山の力をコントロールしようとして失敗した、とか? その結果が……魔女の厄災……?)
 今はまだ単なる思いつきでしかない。

 講堂での仕事を終えたリュリュは、壁画の模写に取り掛かる。
 傍らではトゥーリが写真を撮りまくっているが、それでも敢えて模写をするのは、模倣して描くことで分かることもあると考えたからだ。
 どんな心境で描いたのか、画材は、技法は――
 そうした情報を考古学に詳しい者達と共有した結果、その画材は天然由来のもので、かなり古い事がわかった。
 記録を残すために時間をかけて丁寧に描いたようだ、という事も。
 その流れで、リュリュは倉庫や宝物庫に保管されていた品々も描いていった。

 その作業をサポートしつつ、グレシャムは思う。
(なるほど、絵と写真の両方で……か。うん、良いんじゃない?)
 正確な材質や、文字などの刻み方の鑑定は、持ち帰るか学者を呼び込むしかないだろうが、それ以外は結構写真撮影や模写でも間に合う筈だ。
 基本的には現場保存の方針だが、正直来月以降はどうなるかわからない。
 今後此処の重要性を行政が認めて紋床殿レベルの警備区域に指定された場合、局員でも調査継続許可が出るかどうか。
 それ以前に、賊に荒らされる危険もある。
(って言うか今まさにその危険に晒されてるわけだけど)
 グレシャムは賊の背後からこっそり近付き、釘ならぬ針護身用の暗針をぷっすり刺した。
「ンぎゃっ!?」
 賊が悲鳴を上げて飛び上がる。
「あら失礼? 出す物間違えちゃったみたいで」
 ま、秘孔とかは外してあげたし大丈夫だよね。
 でも二度目はないので……ね?

 その賊、グライスは真面目に仕事をしていたのだ。
 少なくとも宝物庫に足を踏み入れるまでは。
 ダウジング当たるも八卦と霊視を組み合わせた「調査セット」で『今回の調査に有用そうな物』を指定したところ、ビンビン来たのは講堂の盃だった。
「まあそりゃそうだな」
 納得の結果だが、グライスとしてはもっと……なんかこういい感じの宝石とか、装飾の施された装具とかを期待したわけで。
 そりゃ『調査に有用』という点では盃が一番だろうし、この優秀な占いの腕を褒めてやりたいけどね?
 でもほら、建前上は調査だとしてもね?
 ナゾトキには不必要な金目のものとかね?
 そういうのを何とかして持ち帰ろう――なンて邪心がどっかに……ないよ? ないけどね? ※あります
 どこかに自分達が入って来たのとは別の出入り口がないか、きちンと確認したのも逃走経路を確保する為じゃないよ、何も見付からなかったけどね?
 妙な仕掛けも厄ブツも見付からないし、倉庫や宝物庫の中身も調査セットに多少なりとも反応があったものを優先的にチェックして、きちンと調査記録に纏めたンだよ?
 だからその、ね?
 少しくらいご褒美的なものがあってもいいかなーって。
 調査セットに反応しない物なら、お持ち帰りしても大丈夫だよねって。
「つーか宝探ししたいなとしか言っていないのに! なンで速攻バレてンの!?」
 こうなったら護身術武芸者と脱出名人による華麗なこう……とにかく逃げるンだよォーッ!

 賊が逃げ去り、静かになったところでグレシャムは再び思考を巡らせる。
(水盆のことを思えば、内部の物も「そこにその形で在ること」に意味があるタイプが有るのでは……って懸念があるんだよね)
 だから持ち出しに関して、グレシャムは慎重派だった。
(ただ、撤収後の盗掘や侵入が一番どうしようもないのもあるし……いや、逆も有りか?)
 部品が欠けていれば、外部の人間には正しい運用が出来なくなる。
 それも兼ねて、部品抜きというか調査の為に一部を持ち出すのは有効かもしれない。
 もっとも、きちんと鑑定を終えてからでないと、自分達にもどれが重要パーツなのか判断が付かないのが難点だが。
 それに、まずは全てを記録するのが先だ。

 後に、グレシャムの憂いはユートリッド・アステリオンによって解消された――完全にとは行かないまでも、かなりの部分で。
 一通りの調査を終えて撤退する時、ユートリッドはふと閃いたのだ。
(あれ、目隠しに使えるんじゃないか?)
 先月の除雪の際に作った、黒い雪のブロック。
 何か使い途はないものかと思っていたが、その特性を上手く活かせる場が見付かったようだ。
「おーい、ちょっとこれ積むの手伝ってほしいんですけどー」
 ブロックを積んである場所に駆け寄り、皆に声をかける。
 地下への入口を開く鍵は、庭の飛び石と水と水晶の欠片だ。
 このまま放置すれば、いずれ害意を持った誰かがそれに気付いてしまうかもしれない。
(水盆の水晶の並びを乱して認識操作っぽい魔術具も再起動させるみたいだけど、9月の時みたいに列強に嗅ぎつけられたところで極力何も出来ない様にしたいんでね)
 具体的には、黒い雪のブロックで飛び石を覆い隠してしまうのだ。
 庭にあるもの全てをひとつひとつ、小さなイグルーのようなドーム状になるように、ブロックを隙間なく積み上げて行く。
「飛び石隠しと、他にもフェイクで複数……こんな感じで」
 灌木やら何やら大分片づけはしたけど、後はもう飽きちゃったんで適当に皆でかまくら作って遊びました、ぐらいの見た目にしておけば敢えて手を出す者もいないだろう。
(この黒い雪を作り出してる術の影響が消えるまでではあるだろうけど、自然に融けないのは都合が良い)
 ただ一点、蒸気式強化外骨格を置いて来てしまった事だけが悔やまれる。
(ちょっと大変ではあるけど……それはもうしゃーない)
 最後に水盤を弄れば、知識のない者がここを突破する事は出来ない筈だ。

●調査結果

 宝物庫には、祭具らしきものが大量に保管されていた。
 内訳は鏡や器など用途がわかりやすいものから、想像もつかないもの、キラキラした装飾がなされているものなど多種多様。
 倉庫には石版がいくつか保管されていた。
 壁画と共通の古代言語で書かれたもので、大部分は手紙と思われる。
 住居部分はかなり以前に放棄されたと見られ、生活必需品と思しき物の他には特筆すべき物はない。
 物品リストは鋭意製作中。

 トゥーリが巫女に会う事は叶わなかった。
「人目につかぬよう、隠れ住んでおられるのだよ」
 集落の場所を知る研究者は言った。
軽々にその場所を教える事は信義にもとるとは思わんかね?自分も長年にわたって信頼を積み重ねてきた上で、今に至っているのだ
 だが、それ以外の調査には快く協力してくれた。
 その結果わかったのは――

 かつては大掛かりな儀式を伴う大人数で縁を結んだ上で何かをする魔術が存在したが、制御困難と大きな反作用ゆえに衰退。
 現在は逸話的なありがちな脚色が施された話が残るのみ。
 南西区内陸部で細々と、法術ベースの儀式と宗教観に根ざした生活を続けている。

 その儀式で火山の活性を制御していたと考えられるが、今はもう失われている。
 羽根飾りに関しても記録はなかった。
風を祀る巫女も、いないみたいレナって風っぽいし、もしかしてって思ったんだけどな
 後日、トゥーリは墨辰殿に関する資料と共に、レナと羽根飾りの写真を研究者に預けた。
「ダメモトだけどね」
 巫女達から何らかの回答がある事を願って。

(担当マスター:STANZA)

【獲得タイスキル】
ファナン・ハリーリーの『仕事仲間』
バドル=アーケイナの『仕事仲間』
エルメリンダ・メレンデスの『仕事仲間』
サフィーロの『仕事仲間』
トゥーリの『仕事仲間』
ユートリッド・アステリオンの『仕事仲間』
グレシャムの『仕事仲間』
シルエイティ・ワンビアの『仕事仲間』
メルヴィル クワンの『仕事仲間』
グライスの『仕事仲間』

【墨】
反戦の聖女様に繋がる手がかりを期待して、墨辰殿地下調査に参加します。用意していただいたランタンを使い、十分な明るさを確保します。数が十分あるなら、分かれ道にも置くようにします。緊急時に備えて【笑顔を照らす星飾り】のノウム管もお守りがてら持っていきます。

わたしは、調査中の出来事を【紙上にも花を咲かせて】絵で記録したいと思います。

変わった事象があれば絵に描きたいと思います。そのために、何かイベントを起こそうとする場合には、記録のためにそこに行きます。具体的には、エルメリンダさんが盃に対するアクションを取るときなど。
【物覚え良好】で記憶力には自信がありますし、一瞬の出来事も見逃さないように、【動体視力強化】を準備していきます。

「火山の壁画」を模写して情報を共有できるようにします。情報だけなら写真でも共有できますが、模倣して描くことで分かることもあるのではと思います。どんな心境で描いたのか……落ち着いている、急いでいる、一世一代の作品、などが見えてきたり、その場でよく鑑賞することで、絵具等画材の検討等もつくのではないかと。そうした情報を考古学に詳しい方と共有することで年代や文化の考察を得られればと思います。

もし倉庫や宝物殿等が見つかり、絵や興味深い物品があれば、描いておきます。複数あれば、重たい、大きいといった持ち出せなさそうなもの、希少品を優先します。
地図の作成も協力して行います。