制作者に聞いてみた -童話画廊–

AP制ゲーム『童話画廊』について、制作者のヒサギさんに話をうかがった。『童話画廊』は2023年2月2日に開始し、7月31日に1期が終了。ヒサギさんへの過去2回のインタビュー、「制作者に聞いてみた -Stella Board&Stroll Green -Restroll–」や、「制作者に聞いてみた -Stroll Green-」も必見だ。

もくじ
  • 3回目のインタビュー
  • 『童話画廊』のコンセプト
  • 『童話画廊』が影響を受けたゲーム
  • 『童話画廊』のゲームシステムで工夫したところ
  • 『童話画廊』の課題
  • 『童話画廊』のこれから
  • 楽しかった所、辛かった所
  • 最後に

3回目のインタビュー

――今回、3回目のインタビューとなります、ヒサギさんです。今日はよろしくお願いします!

ヒサギ:こんにちは、ヒサギと申します。「Rの手記」さんでは3回目のインタビューとなります。

通算9作目となり、どれもひとつひとつ丁寧に取り上げて頂いてなかなか頭が上がりません。いつもありがとうございます。今日はよろしくお願いします。

――詳しい自己紹介は『Stroll Green』のときのインタビューに掲載しているので、省略させていただきます。

『童話画廊』のコンセプト

――まずは、今回取り上げる『童話画廊』のコンセプトについてお願いします。

ヒサギ:前々から『Stroll Green』から続く戦闘システム部分だけを遊び倒したいという考えがありました。これらのゲームはもうすでに開催が終了して遊ぶことはできないのですが、『Clip Traveler』のようにコンテンツと遊ぶ土台だけ用意しておいて、集中的に遊ぶというよりは隙間時間で遊びたいだけ遊ぶようなものが欲しいなと思い、考案するに至りました。

基本的に、戦闘システムに大きくウェイトを持たせた遊び方ができるようなところがコンセプトとなっています。

――あくまでロールプレイはおまけで、戦闘がメインという設計だったんですね。確かに、大会戦など、対人コンテンツも豊富で、従来のシステムで戦闘をしてみたい人にはうってつけのタイトルだったわけですね。

ヒサギ:そうですね。ロールプレイに関してはコンセプト柄、あまり凝ったものにしないつもりで考えていました。とにかく他プレイヤーとこのシステムで戦ってみたいという気持ちが最初にあり、そこから発展していろいろな種類の戦闘を用意する形になりました。

『童話画廊』が影響を受けたゲーム

――『童話画廊』が影響を受けたゲームってありますか?以前は『スプラトゥーン2』などを挙げていただきましたが

ヒサギ:まず、『つぶきゃら。』や『コトシタ』です。symalisさん制作のゲームですね。最初の印象としてこれらを思い浮かべた方は少なくは無いのではないでしょうか。
これらのゲームもいくつかの戦闘の種類があり、遊ぶ範囲も遊ぶ量もそれぞれで調整できるような仕組みを揃えていました。『コトシタ』は開催期間中に同GMさんのゲームだけでなく他GMさんのゲームが並行稼働していて、そういう仕組みを揃えて遊べるようにしておくことを目標にしていました。

――おお『コトシタ』!私は『コトシタ』から定期を始めたので親のように見ている側面があります。あのゲームも戦闘がメインで物語があるという形でしたね。

つぶきゃら。:Twitter(現在のX)と連動し、ツイートを参照して新しいスキルを取得し、成長傾向によって能力値が成長。プレイヤーができることは、スキルの忘却など非常に限られており、その分、手軽にプレイが可能。ランダムに他のキャラクターとパーティを組んでの5対5の対戦や、固定チームでの「大乱戦」(トーナメントの大会)等があった。2014年公開。

言の葉の樹の下で:他キャラクターを連れ出して戦闘を行うメインストーリーの「討伐戦」、大会形式の「大乱戦」、他のプレイヤーが作成した物語に挑む「物語戦」、他のキャラクターとの「練習戦」などの戦闘の種類があった。『つぶきゃら。』と同じく、Twitterと連動させると過去のツイートを参照してスキルを取得する。2017年公開。

――他に影響を受けたゲームはありますか?

ヒサギ:他には、Project Moonさんのゲーム『Library of Ruina』というゲームがありますね。
先日RTA in Japanでも配信された『Lobotomy Corporation』の次回作にあたるゲームですね。
ゲーム性は全く異なるのですが、これらは着想にヒントになるものがいくつかあります。

ひとつは対人戦闘への仕組みです。このゲームは他プレイヤーとバトルする要素は無いのですが、一方攻撃ばかりせずに戦闘相手の攻撃を攻略していなすほど報酬が上がっていくシステムがあります。

「用意された戦術や戦略の美しさを鑑賞するとともに、それらを完璧にいなした者こそより強者である」と相手の戦術や戦略を捌くという部分があると、わけも分からず倒されるみたいな戦闘よりは華やかなものになるかな、という部分を実験的に取り入れてみました。

相手の繰り出す予告のある攻撃技を、こちらの技でうまく相手してやりいなしていくことで報酬が上がっていくシステム「感情レベル」というものがある。(c)Project Moon

あとはギミック感のある戦闘について、『Stella Board』では凝ったものをあまり入れられなかったのですが、「こういうふうに攻略するだろう」とプレイヤーにわかってもらうようなそそのかす仕様とかは参考になりましたね。

――なるほど、ギミックありの戦闘という物を『Library of Ruina』でヒントを得たと。確かに、相手の戦略などを受けきって、それを捌くというのは、いろんなゲームでも面白い要素として捉えられる所なので、とても良いことと感じます。

『童話画廊』のゲームシステムで工夫した所

――『童話画廊』のシステムで工夫している部分は?

ヒサギ:先程ちらっとだけ言ったのですが、攻略戦のギミックのわかりやすさは結構工夫しました。
例えば、いくつかの戦闘では敵の体力が誰がどう見ても異常に高く設定されていて、しかも第1行動目から怪しい行動をしてくるような戦闘があるのですが、そういう部分で露骨に「おそらくまともにダメージを与える以外に何か攻略方法があるのだろう」と誘導する仕掛けがあります。
それでいてアタッカーやヒーラーなど、均等に役割を与えるのはなかなか至難の業ではありましたが……

――中盤の方にあった、C-2ですか。そこの「星の銀貨」というステージも、だいぶ敵が露骨でしたね。体力が異常に多くて、絶対に普通の戦い方じゃ勝てないなっていう感じでしたね。

戦闘がはじまった瞬間、明らかに普通の戦闘では無さそうだと思わせる敵の並びだ。

ヒサギ:そうですね。「星の銀貨」については特に力作で、さまざまな仕掛けが施されていました。

まず前述のものがそうであるのに加え、元となる同タイトル「星の銀貨」というお話に沿って考え、「欲している人になにかを与えることでハッピーエンドとなる」ことを戦闘の筋書きに置いてみました。

そしてそれを促すNPCを配置したり、それに気づけばNPCでやっていることを自分たちがしても良い、という感じで敵の異常さから攻略方法を連鎖的に引き出せるようなものを心がけていました。正直、なかなかうまく伝えられずに悪戦苦闘としていましたが……

――「星の銀貨」ってただのステージ名だと思ったら、実在する童話だったんですね!そしてその再現であったと。もしかして、全部のステージが元ネタがあるんですか?

ヒサギ:そうです。タイトルが同じなので、よかったら検索してみてください。
ほぼすべてのステージにこのような元ネタが存在し、かつそれぞれのお話にあうような仕掛けを一つ一つ考えています。そのうえプレイヤーを誘導したりバランスを整えたりするようなことをしていたので、普段の倍以上大変でしたね。

――それは大変だ……それに気付いたプレイヤーは何人いるんでしょう。けれど、こうした背景を用意しておくというのは、とても面白い試みですね!