キャラクターの描写と「おいしい展開」
――定期更新型ゲームのプレイヤーは現在、絵を描いたり、描いてもらったりというのは盛んに行っています。また、2~3000字程度の文章を連載するプレイヤーも多くいます。ただ、発注文やプレイング(行動指針)を書いて、小説やリプレイを書いてもらうというのは未知の領域です。小説やリプレイを書いてもらうときのことについて、もう少し教えてください!
由良辺:私個人がほかのライターさんやマスターさんに小説やリプレイ書いていただいた際、いちばんうれしかったのは、自分が知らなかったり、思いつかなかったりした要素でキャラクターらしい描写をしていただいたときです。
発注したり、プレイングからリプレイを書いてもらったりするときって、自分自身の引き出しにはない知識や雰囲気が盛りこまれた「おいしい展開」が描写されたりするんですよね。私は、それこそがライターさんやマスターさんの力量だと思っていたりもするんですが、これはね、経験してみないとわからないと思います。感動のひとことにつきます。もちろん、ライターさんによっては趣向の合う合わないもあるでしょうが、企業が運営するPBWにおいては会社基準で最低限のクオリティというものも保証されていると考えれば、私と同じような体験をしていただくのはむずかしくはないかと。
――由良辺さんはマスター、ライターとして、PBWを小説を「書く側」でもあります。他の人のキャラクターを動かすことについての感想や、こういう風にプレイングを書いてもらえると書きやすいとかがあれば、教えてください。
由良辺:プレイヤーさんのキャラクターさんたちを動かすときはですね、私はいつも、めちゃくちゃ緊張してます。冷や汗とか出てきたりすることもあります(笑)。
でもね、やっぱり、数いるライターさんの中から選んでご発注いただけたのだと思うと、すごくうれしいんです。ひょっとしたら、たまたま、受注しているのが私だけだったのかもしれないですが、それでもプレイヤーさんにとって大切なキャラクターさんをあずけてくださるわけですから、ある程度の信頼があるのだと考えるようにしています。
ですから、私がほかのライターさんやマスターさんに書いていただいたときのように、プレイヤーさんの期待を上回るようなものを納品したいと思うんですよね。
もちろん、魅力的なキャラクターさんだから忠実に描写したいというのもありますが、私の場合、いちばんはプレイヤーさんによろこんでほしいんです。ご発注いただいた時点で、私もよろこばせていただいているので、いっそ倍返しにしたい(笑)。
私の場合ですが、発注文やプレイングに追加で書いていただけると、ありがたいなあ、という文言がいくつかあります。
ひとつめは「NG要素」。言わずもがな、キャラクターさんが絶対に取らない言動などの指定ですね。
ふたつめは「アドリブ」や「他キャラクターとの連携」の可否です。特に後者は、プレイヤーさん同士ですら接点がないキャラクターさんと一緒に描写させていただくこともあるので、こちらの可否がわかったほうが心おきなく絡みを書けます。
みっつめは「プレイヤーさんの意図」と「キャラクターさんの目的」ですね。二者の目的は、必ずしも一致しているとは限りません。プレイヤーさんはキャラクターさんのたのしんでいる姿を期待しているのか、それとも、苦悩する姿を期待しているのか。これを履き違えてしまうと、とんでもないことになりますので!
よっつめは、おおよそのクリエイターさんに通じると思われる魔法の言葉。それは「不明点はおまかせ」です。このひとことがあるだけで、クリエイターさんが躊躇する場面は、かなり減るのではないかと思いますよ。
クリエイターがPBWで活動するメリット
――一次創作と、用意された舞台(シェアード・ワールド)での出来事を描くのでは勝手が違う部分とあると思いますが、PBWで活動していて良かったと思えることがあれば教えてください。
由良辺:クリエイターとしての目線にはなりますが、PBWで活動していてよかったな、と思うところは、まず大前提に「ブランディングされた舞台」があることでしょうか。
趣味で一次創作をやったことがある人はわかると思うのですが、あれって完全にゼロからのスタートなんです。世界観やキャラクターを創りだすところから……というよりも、知名度的な点で。
誰も知らない作品を、ひとりで黙々と作り続ける。なんなら、完成して発表したところで、見向きもされない。この無反応が堪えることは、今でもしばしばありますね。心血そそいでつくったものですから、ほめられなくても、見てくれる人くらいは欲しい(笑)。
その点、現在PBWを運営している企業さんには、一定数のユーザーがついています。そういったPBWで活動を始める場合、それはゼロからのスタートにはならないんです。
ですから、ネット社会となった現代では、クリエイターが自分の作風を知ってもらうための場にもなるのではないかなと思っています。作風を好いてくださったプレイヤーさんが、個人の創作に興味を持つ可能性もゼロではありませんから。
――なるほど、PBWでの活動は、クリエイターさん自身のファンを増やす活動にも繋がりそうですね。