制作者に聞いてみた -『暗夜迷宮』-

キャラクター交流型ウェブゲーム『暗夜迷宮』と『IDEA CRAFTERs』の制作者、reifierさん(@_reifier_)に話をうかがった。1作目『IDEA CRAFTERs』は2022年4月に開催。2作目の『暗夜迷宮』は2023年2月18日から6月19日までのゲーム期間で、2000を超えるキャラクターが参加した。

IDEA CRAFTERs

探索でアイテムを採集し、「レシピ」をもとにアイテムを作成したり、オリジナルのアイテムを作り出したりしながら、文明が失われて無人となった惑星の「復興」を行うゲーム。

暗夜迷宮

現代日本が舞台のキャラクター交流型ゲーム。プレイヤーキャラクターは人知れず怪異に立ち向かう「退魔師」。東京都の一都市「陽桜市」を丸ごと覆う巨大異界が現れ、これに突入し、異変の解決に挑む。

もくじ
  • 自己紹介
  • 『暗夜迷宮』のコンセプト
  • 影響を受けたゲーム
  • 『暗夜迷宮』のゲームシステムで工夫した所
  • 『暗夜迷宮』で見えた課題
  • 『暗夜迷宮』のこれからと2期
  • 楽しかったところと辛かったところ
  • 最後に

自己紹介

――本日はインタビューを受けてくださり、ありがとうございます!受けてもらえるかちょっと心配でしたが、快諾していただき嬉しいです。どうぞよろしくお願いします!まずは自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか?

reifier:『暗夜迷宮』『IDEA CRAFTERs』等の企画・開発・運営を行っています。reifierです。れいふぃえ、と読みます。

“キャラクターたちが交流を行うための場”を作り上げることをコンセプトに、いろいろとシステムを模索しながらゲームを開発しています。
インタビューをお受けできて光栄です。本日はよろしくお願いいたします。

『暗夜迷宮』のコンセプト

――それでは、『暗夜迷宮』のコンセプトを聞いてもよろしいでしょうか?

reifier:『暗夜迷宮』は”戦闘ログでキャラクター表現を行う”というコンセプトの下に作られています。

歴史的な経緯もあり、いわゆる「定期ゲー界隈」において戦闘といえば目標を達成するために複雑なビルドを構築する自動戦闘を指すことが多いです。

しかしながら、キャラクター交流を行うためのゲームとして見るのであれば、正解を追い求めるのではなく「いかに自分のキャラクターの理想の動きを戦闘ログとして表現できるか」という遊び方もあってもよいのではないでしょうか。そういった想いでこのゲームは制作されています。

――なるほど。ステータスの振り直しが自由であったり、型(スタイル)をいくつも登録できたり、演出もできるようになっている戦闘システムには最初とても驚きましたね。こんな形の定期ゲーは初めてだと!

reifier:ありがとうございます。キャラクター表現のためのゲームということで、より自由な表現を追い求められるようシステムには工夫を凝らしました。

「戦闘スタイル」の画面。複数のスタイルを作成することができ、スタイルごとにステータスも自由に設定できる。
説明やロール区分(アタッカー、タンクなど)を設定することで他のプレイヤーからも役割が見えやすくなる。

影響を受けたゲーム

――『暗夜迷宮』が影響を受けたゲームというものは存在しますか?

reifier:いくつかありますが、最も影響を受けたゲームは『FINAL FANTASY XIV』(FF14)というネットゲームです。非常に有名なネットゲームなので、すでに名前をご存知の方も多いかもしれません。

『FINAL FANTASY XIV』では特にボスが使用するスキル・状態異常が非常に多彩で、スキルの名前や付与される状態異常によってボスの個性を表現しつつ戦闘を盛り上げています。
ネタバレになってしまうので詳しく説明はできないのですが、私個人としては「アレキサンダー」というボスの戦闘ギミックが非常に好きです。いつかああいった戦闘を表現してみたいですね。

また、『FF14』はUIも非常に親切であり今の戦闘状況がどうなっているのかを画面を見ればすぐ分かるように工夫されています。

これらの点において『FF14』は非常に参考になる部分が多く、スキルデザインをはじめ、戦闘UI、スキルの説明方式など様々な面で影響を受けています。

――『FF14』ですか。楽しいゲームですよね。私も最近やっています。定期ゲーをプレイしている方でFF14をしている方は結構多くいるので、もしかしたら伝わったりしたのかもしれませんね。

『暗夜迷宮』の戦闘画面。
敵味方の状態やラウンド数など、今の戦闘状況がすぐ分かるように工夫されていると感じる。

『FINAL FANTASY XIV』……スクウェア・エニックス社が開発・運営しているMMORPG。2010年にサービスを開始、2013年に「新生エオルゼア」(2.0)としてサービスを刷新、以降約2年ごとに大規模な拡張アップデートが行われてきた。現在登録者数は2700万人を超える。

『暗夜迷宮』のゲームシステムで工夫した所

――ゲームシステムで工夫したところはありますか?

reifier:“戦闘ログでキャラクター表現を行う”というコンセプトを実現するため、ゲームシステムでは様々な工夫を行っています。

そのすべてをここで語ることは難しいので、ここでは特に工夫したところを1つ紹介しましょう。ユーザー視点だと少し意外に感じるかもしれませんが、最も工夫したところは「ウェーブ制の導入」です。

『暗夜迷宮』の説明書「戦闘」内「ウェーブと敵の追加」より。

キャラクター表現のための戦闘システムを組み上げるにあたり、”即死攻撃”や”超強力なデバフ”など、キャラクター表現をするにあたってはあったほうが嬉しいものの従来の戦闘開始時に一斉に敵が並ぶシステムでは強くなりすぎるスキルが問題になっていました。

それらのスキルは”敵を多く出し敵1体の価値を下げる”ことでスキルが強くなりすぎることを避け導入することは可能なのですが、そうすると逆に範囲攻撃等が強くなりすぎてしまい、単体攻撃を行うキャラクターの見せ場がなくなってしまう懸念があります。

そういったジレンマに非常に頭を悩まされていたのですが、最終的に考え出されたのがウェーブ制です。ウェーブ制であれば敵1体の価値を下げつつ範囲攻撃が強くなりすぎるのを抑えることができます。また、ウェーブにHPの多い敵を織り交ぜ、HPの多い敵を早く排除しないと次のウェーブが遅くなるようにすることで単体攻撃の価値も維持するようにしています。

最初から敵が全て戦闘に参加せず、ラウンド経過、もしくは敵の全滅により、敵の増援が出現する。

最も工夫したポイントはそんな感じでしょうか。ルールブック上ではサラッと流されている部分ですが、実は仕様決定にかかった時間のうち半分ぐらいをウェーブ制に関することが占めていたりします。

――半分もですか!ウェーブ制というのもまた、初めての経験でしたね。