制作者に聞いてみた -『暗夜迷宮』-

『暗夜迷宮』で見えた課題

――『暗夜迷宮』はかなりの大成功に終わったと個人的には思っていますが、その中でも課題というものはありましたか?

reifier:現状最も課題となっているのは、やはり私自身の多忙により開発・運営コストをなかなか割けなくなってしまっていることでしょうか。

開発に関しては、事前に公開予定のコンテンツのすべての開発を終えてから公開したり、本番と同じ環境を作り念入りにテストをしたりといった方向でゲーム開催期間中の開発コストを下げて対策しようとは考えています。

一方、運営コストについてはまだ悩んでいる部分も多いです。ありがたいことに『暗夜迷宮』には総キャラクター数が2000を超えるほどの参加者の方がいらっしゃったのですが、その分管理コストも増大し、多忙・多忙でないに関わらず1人で管理するのが少し難しくなってきています。

キャラクター一覧画面。最終的に登録数は2000を超えた。
このように、各メニューではナビゲーターNPCの千世原 界那が案内してくれる。

対策としてはモデレーター制の導入を考えているのですが、どうやってモデレーターを募集するか、モデレーターに対してどのような対価を設けるか、モデレーター用のシステムはどのような作りにするのがよいか等考えることが多く、まだ課題は多いと感じています。

――ひとりで作り上げることの弊害との戦いということですね。そして、それを解消するためにもモデレーター制の導入を検討していると。次世代のGMと呼ばれたreifierさんにも悩みがちゃんとあるんですね……

モデレーター……仲裁者、調整役。運営とユーザーの間に入り、サポートする役割。一般的には、フォーラムを管理したり、助けが必要なプレイヤーを支援したりといった活動を行う。

『暗夜迷宮』のこれからと2期

――『暗夜迷宮』の他に『IDEA CRAFTERs』などもありますが、『暗夜迷宮』のこれからというものはありますか?

reifier:『暗夜迷宮』のコンセプト、”戦闘ログでキャラクター表現を行う”にはそこそこの手応えを感じられました。しかしながら、せっかくキャラクター表現を行ったログがあまり顧みられないという問題も同時に感じています。

次回、戦闘のあるキャラクター交流型ウェブゲームを制作する際はその問題を解決できるような作品にしたいと考えおり、具体的には3つ考えていることがあります。

まず1つは「ラウンド数をぐっと縮める」ことです。『暗夜迷宮』のログは一つ一つ読んでいくには非常に長く、ざっとスクロールして読み飛ばすことがほぼ前提になってしまっていました。これを5ラウンドほどに縮めることが必要になってくるだろうと感じています。

2つめは「自動戦闘をメインコンテンツに置くことをやめる」ことです。自動戦闘は事前行ったビルドでコンテンツに挑む以上、生成されるログが似通ったものになってしまい、見なくてもいいかな、という感想になってしまいます。

そこで「他人と一緒にリアルタイムで戦えるコンテンツ」をいつでも遊べて、遊びたくなければ遊ばなくてもよい形でメインに置き、自動戦闘は「装備強化」等の1人用コンテンツとして置くことを考えています。

3つめは「他のキャラクターとのアイスブレイクのための戦闘コンテンツを置く」ことです。2つめとも関連しますが、他のキャラクターとマッチングして戦闘を行いつつ演出を見せ合うことで、戦闘と交流にシナジーが生じ、よりゲーム全体を盛り上げられるようになるのではないかと考えています。

これらにより何ができるのかについては、「ゲーム内マッチングできる戦闘TRPG」をイメージするとわかりやすいかもしれません。もちろんまだまだアイデア段階なので変更される可能性も高いですが、現状このようなことを考えています。

――凄い、本当に定期ゲーになるんですか?新しい要素が山盛りですね。こんなこと可能なのか、と思えてしまえる程の難題ばかりだ。

――暗夜迷宮の続き、2というのは出ますか?

reifier:『暗夜迷宮』の続編はいつになるかは不明ですが出す予定です。

多忙により開発工数が当初の予定より大幅に減少してしまった都合上、『暗夜迷宮』というタイトルの回収、NPCキャラクターや桔梗院といった公式設定の深掘り等予定していたのに提供できなかったコンテンツがある程度溜まっているので、続編で回収できたらいいなと考えています。

――おお!楽しみです!

楽しかったところと辛かったところ

――『暗夜迷宮』を開発、運営する上で、楽しかったところと、辛かったところを聞かせてください。

reifier:
楽しかったところは多彩なスキルを組み上げることでしょうか。

『暗夜迷宮』では多彩なスキルを表現しつつ戦闘エンジンをシンプルに保つため、MODシステムのようにスキル側で機能拡張が行えるよう戦闘エンジン本体が作り上げられています。 その内部的なMODシステムには色々と制約も大きいのですが、その制約をすり抜けて複雑なスキルを作った際などは開発の楽しみを強く感じます。

MODシステム……ゲームのプレイヤーがゲームの機能を拡張することができるシステム。ゲームもよるが、MODに対応しているゲームでは新しいアイテムを追加したり、新しいルールを導入してゲーム内容をカスタマイズできたりと様々なことができる。ここでは”ゲーム”を戦闘エンジン本体、”プレイヤーが追加するMOD”をスキルと見立てて解説されている。

特にスキル”不撓不屈”など、ゲームルールにすら切り込んだスキルを作り上げ、それが実際に動いているときの達成感はひとしおです。

HPが0以下になっても、2ラウンドの間戦闘を継続できるスキル「不撓不屈」。最序盤から入手できる「銀」から作成可能で、HPの低いアタッカーに重宝された。
「不撓不屈」が発動した場面。「ゲームルールに切り込んだ挙動をする」ような多彩なスキルが、キャラクターが特異な力を持っているという表現にも繋がっているように思われる。

逆に辛かったところでいうと、これもまた戦闘エンジンに関わることなのですが、エンジンが成熟しきっておらず時々戦闘コードの大部分の書き直しが必要になったことですね。
戦闘のテストという目的がある以上、戦闘エンジンをより洗練しこれからのシステムに活かす必要があり、書き直しは必要経費ではあります。

しかし、今までに公開したスキルには変更があまり波及しないようにしつつシステムを何度も書き直すのは非常に高コストで、開発していてなかなか辛いポイントでした。

――なるほど、これがテストなんだと思えないぐらい完成度が高かったんですが、まだまだ新作でクオリティが上がっていくんですね